歯ぎしり・食いしばり

  • 歯ぎしりの原因は、夜間低血糖症やストレスなど様々ですが、小学生や中学生の子供と大人では原因や対策が異なります。
  • 歯ぎしりを放置すると様々なデメリットがあります。
  • 治療には保険適用のマウスピース(ナイトガード)や自分で出来る対策法もあります。
  • 子供の歯ぎしりは放っておいても大丈夫か?

歯ぎしり・食いしばりの問題

歯ぎしりと食いしばりの違い

歯ぎしり
歯ぎしり

歯ぎしり

歯ぎしりは睡眠中に上下の歯を擦り合わせ「キリキリ」と歯の擦れる音を出します。本人は気がつかないため、家族から指摘されて初めて気が付くことがほとんどです。

そのため、同室者の睡眠を妨げるばかりか、同室者の睡眠に悪影響を与えないかと心理的負担になり、睡眠の質が下がってしまうことが問題です。

食いしばり
食いしばり

食いしばり

夜間、日中問わず無意識の内に上下の歯を強く噛み締めている状態です。

スポーツ選手、例えばゴルファーがドライバーを打つ時、野球選手がボールを打つ時、ウエートリフティングの選手がバーベルを上げる時に上下の歯を強く噛み締めますが、「食いしばり」はそれらとは別の反応です。

顎の動きの違い

歯ぎしりの動き
歯ぎしりの動き

歯ぎしりは睡眠中に下顎を左右に動かし上下の歯を擦り合わせます。そのためグライディング型の歯ぎしりと呼ぶこともあります。

食いしばりの動き
食いしばりの動き

食いしばりは垂直方向に上下の歯を強く噛み締めます。そのため、クレンチジング型の歯ぎしりと呼ぶこともあります。

歯ぎしり・食いしばりによる口腔内の問題

Problem

歯の破折

歯ぎしり・食いしばりの強い人の歯が真っ二つに割れてしまうことがあります。特に起こりやすいのは上顎の第一小臼歯、第二小臼歯です。

歯の破折は神経のある歯でも起こり、この様に割れてしまった歯は、抜歯するしかありません。

歯の破折
歯の破折

Problem

歯根破折

この歯は神経を取った歯です。神経を取ると歯全体が弱くなるため、歯根が割れやすくなります。特に歯ぎしりや食いしばりなどが強い人ではその傾向が強くなります。

歯根破折
歯根破折

Problem

くさび状欠損

くさび状欠損は歯の根元が削れたようになる現象です。以前は研磨剤の付いた歯磨剤を使い横磨きをすることが原因と考えられていましたが、現在では歯ぎしりや食いしばりによる歯の根元に応力の集中する事が原因と考えられています。

このくさび状欠損も歯の表面のエナメル質が剥がれ、知覚を感じる象牙質が露出することによって、知覚過敏を誘発します。

くさび状欠損
くさび状欠損

Problem

知覚過敏

冷たい物や熱いものが口の中に入るやいなや痛みを感じ30秒ほど続くのが知覚過敏です。
歯軋りや食いしばりは知覚過敏の間接的原因です。

知覚過敏
知覚過敏

Problem

歯のすり減り

大臼歯の咬合面や前歯の切端が極度にすり減ってきます。歯のすり減りが象牙質まで達すると歯が凍みる知覚過敏が起こります。

また、写真の様な場所に骨の隆起が出来てきます。歯が磨り減っている患者さんでは骨隆起を伴っていることをしばしば経験します。このことからも歯ぎしりや食いしばりの存在が想像出来ます。

歯のすり減り
歯のすり減り

Problem

骨隆起(外骨症)

上顎では口蓋部の中心に口蓋隆起、下顎では小臼歯舌側に下顎隆起という骨の添加が起こります。これは歯ぎしりや食いしばりによって、歯に強い力がかかる事で歯根周囲の骨を強化しようとする生体防御反応と考えられています。

骨隆起自体には特に問題はありませんが、余り骨隆起が大きくなりすぎると、入れ歯を作る際に邪魔になります。そんな時には骨隆起を外科的に削除することもあります。

骨隆起(外骨症)
骨隆起(外骨症)

Problem

歯周病の重症化

歯軋りや食いしばりの持続的な力は歯周ポケットの形成⇒歯槽骨破壊⇒歯の動揺⇒歯肉退縮⇒歯の移動といった歯周病を重症化させる一連のメカニズムの一翼を担うことになります。

歯周病の重症化
歯周病の重症化

歯ぎしり・食いしばりの全身的問題

Problem

肩こり

歯ぎしりによって咬筋や側頭筋などに負担が生じ、それらの筋肉とつながっている肩や首の筋肉に炎症が起こりやすいのが肩こりや頭痛の原因です。

肩こり
肩こり

Problem

頭痛

頭痛も肩こりとほぼ同じようなメカニズムで発症します。

頭痛
頭痛

Problem

顎関節症

顎の関節の痛みやカックンという音がするのが顎関節症です。歯ぎしりや食いしばりの影響で咀嚼筋緊張⇒咀嚼筋肥大⇒咀嚼筋肉の疼痛⇒顎関節症⇒関節円板前方転移といった流れで顎関節症に発展する可能性も示唆されています。

現在では、顎関節症はTCH(歯牙接触癖)による影響が強いことがわかっています。

顎関節症
顎関節症

歯ぎしりの原因として飲酒、喫煙、カフェイン摂取、ストレスが挙げられますが、夜間低血糖症も無視できない原因となっています。

夜間低血糖症の特徴

夜間の低血糖状態は、血糖を回復させようと交感神経優位の状態にするアドレナリンやコルチゾールなどの分泌を促進します。アドレナリンやコルチゾールは闘争ホルモンのため、恐怖の夢を見ることが多く、歯ぎしり患者は悪夢体験が多いことが特徴です。

下記症状は夜間低血糖の可能性あり

  • 寝汗がひどい。
  • 寝ても疲れが取れない。
  • 朝起きた時の首のこわばり。
  • 寝る前に何か食べないと眠れないことがある。
  • 午後3~4時ごろにだるさや眠気、集中力の低下を感じる。

夜間低血糖症の血糖値の変動

夜間低血糖症の血糖値の変動
夜間低血糖症の血糖値の変動

46歳男性の2晩3日分の血糖値変動。前半は血糖値の乱高下が激しく、睡眠中は急激に低下。糖質の多い食事が原因と見られる。

糖質制限弁当を食べた日は血糖値も睡眠も安定していた。

(資料提供:医療法人 回生會 新宿溝口クリニック 溝口院長

マウスピース(ナイトガード)

マウスピース(ナイトガード)
マウスピース(ナイトガード)

 就寝時に上顎に装着

歯医者で歯の型を採って作成し、夜寝ている間、上の歯列に装着します。

マウスピースはハードタイプと写真のようなソフトタイプの2種類があります。(通常保険適用になります。)

 治療目的

ナイトガードは下顎を安静にするために歯ぎしりを抑制する効果があると考えられています。また、歯ぎしりの音を防止する目的で用いられたりもします。

ナイトガードは上下の歯のクッションの役割を果たすため顎関節や歯を保護する目的でも使用されます。

 欠点

  • マウスピースを長期化使用すると顎位に変化が起こってしまう危険性があります。マウスピースをやめると多くは再発します。
  • 強い歯ぎしりを有する患者さんは、1ヶ月ほどでハードタイプマウスピースであっても穴が開いてしまることもしばしばです。(保険では作り替えは不可です。)

自分で治す方法

Method

 自己暗示療法

睡眠前に「唇は閉じ、上下の歯はわずかに離れている」と心の中で30回唱えてください。  自己暗示療法が有効なケースが数多く報告されていますので試してみてください。

Method

 意識改革

日中から「唇を閉じて上下の歯が接触しない状態を保つこと」を常に意識する。

Method

 夜間低血糖症対策

  • 早めの夕食を摂る。
  • 夕食での炭水化物の非摂食。
  • 穏やかな血糖値上昇の食事スタイル(低GI値の炭水化物や野菜・肉や魚から食べるなど)

乳幼児期の歯ぎしり

生まれて5~10カ月すると、上下の乳中切歯が生えてきます。この頃、歯ぎしりが起こることがあります。

赤ちゃんの歯ぎしりは、生えたての乳歯が気になったり、どこで噛んだらいいのか試行錯誤をする生理的現象だと考えられています。赤ちゃんの歯ぎしりは成長するに従い自然と消失するものですから心配せずのんびりと構えても差し支えありません。

子供(児童・学童期)の歯ぎしり

子供の歯ぎしり

 対策の必要なし

写真は子供の歯ぎしりの口腔内写真です。歯ぎしりによって前歯が磨り減って短くなっていますが、心配する必要はありません。

2歳を過ぎた頃に乳歯列は完成します。この頃から顎の成長が活発になり、口腔周囲筋や顎関節も様々な影響を受けながら発達します。こういった成長の過程で歯ぎしりが癖になってしまうことがあります。

しかし、子どもの身体組織は柔軟性があり、症状が出る事は少ないと思われます。また、乳歯は永久歯に比べやわらかいため、すり減りが顕著に現れることがありますが、心配する必要ありません。

しかし、極度の歯ぎしりがある場合には、骨格的な歯列不正が原因のこともあります。その場合には、早期に専門医を受診されることをお薦めします。

中学生(思春期)の歯ぎしり

中学生(思春期)の歯ぎしり
中学生(思春期)の歯ぎしり

 ストレスが原因

中学生の12歳を過ぎる頃、乳歯はすべて抜け落ち永久歯へと交換します。中学生や高校生になると友人関係や受験勉強などで強いストレスが加わると歯ぎしりが起こることがあります。

歯ぎしりは上下の歯をする強く擦り合わせることで歯に負担がかかります。そのため、知覚過敏の症状が出たり、虫歯でもないのに硬い物を噛んだ時に痛いといった症状が出る事があります。

ストレスが原因であれば、ストレスが除去されれば、自然治癒することがほとんどです。ただし、歯ぎしりが習慣化してしまった場合には上記の処置が必要になります。

ふかさわ歯科クリニック篠崎では、歯科治療は保険診療を主体に診療を行っております。江戸川区篠崎の歯科にて、歯ぎしりでお悩みの方は当院までお気軽にご相談下さい。
保険証の期限切れにご注意ください。保険証の確認が取れない場合は保険診療として取り扱うことができません。

また、マイナンバーカードによるマイナ保険証での受診にも対応しています。

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FULASAWA

  • 登山
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メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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