口腔潜在的悪性疾患(前癌病変)とは

  • 人体すべての臓器に「癌」が発生するリスクが存在しています。ある臓器に正常状態とは明らかに異なる癌に変化しやすい細胞が出現すれば、これを「前がん病変」と呼んでいました。現在は「口腔潜在的悪性疾患」に統一されています。
  • 口腔癌の口腔潜在的悪性疾患として、白板症(はくばんしょう)と紅板症(こうばんしょう)、扁平苔癬(へんぺいたいせん)などが挙げられます。

口腔粘膜に異常が認められたら痛みがなくても速やかに歯科を受診してください。粘膜の異常の中で見た目として特徴的なものは、「赤い変化」「白い変化」「赤と白が混在した変化」などです。

口腔粘膜異常が起こる場所は、舌の側面、舌の裏側、歯茎、頬粘膜、口蓋粘膜など様々です。

多くの場合、自覚症状がないので放置しがちですが、下記に記載した前癌病変や癌自体になっている可能性も否定できないからです。

口腔潜在的悪性疾患(前癌病変)

口腔潜在的悪性疾患が発症せず、いきなり癌が現れることがあるので、口の中に潰瘍やびらんが出来たら速やかに歯科クリニックを受診することをお薦めします。

紅板症(こうばんしょう)

紅板症

癌に移行する確率約40%

写真は、上顎口蓋歯肉に発生した紅板症です。境界のはっきりした鮮紅斑が認められた典型的なケースです。

この紅板症は自覚症状を伴うことがほとんどで、熱いものや辛いものがしみるといった刺激痛を伴うのが特徴です。

男女差はほとんど無く、50歳以上で見られるようになります。

細胞の変異の程度は白板症よりもはるかに強く、癌に移行するケースが約40%とかなり高い確率になっています。ただし、紅板症は白板症に比べると、はるかに頻度は低いと言えます。

白板症(はくばんしょう)

白板症
白板症

癌に移行する確率約6%~9%

日本人では白板症が最も発生しやすい場所は歯肉です。次いで舌、頬粘膜の順になっていますが、それ以外の場所でも発生します。

痛みを全く感じない為、本人が自覚する事もなく歯科医院の受診の際に発見されることがほとんどです。

この白斑はこすっても取れることは無く、形態も様々で、少し盛り上がったものや平坦なもの、しわ状のものなどがあります。

男性と女性の比率は男性が約2倍で、50歳代になって発現する頻度が最も高いです。

原因ははっきりと解っていませんが、長期間何らかの物(合わない入れ歯、虫歯などの歯牙の尖った所、不良補綴物)によって刺激された場所に発生することが多く、喫煙者では更に発生リスクが高いことが知られています。

白板症が癌に移行する割合は、日本においては、約6~9%、欧米では、5~17%となっています。

治療法は、外科的切除が最も有力です。白板症は必ずしも癌になるわけではないので、広範囲に渡っていて切除が難しい場合には予後観察ということもあり得ます。

白板症の見た目

大臼歯の頬粘膜に出来た白板症

大臼歯の頬粘膜に出来た白板症


横方向が2cm5mmの不整形な長方形の形をしています。少し盛り上がったようにも見えます。

白い部分を擦っても取れません。 痛みを感じることはないので歯科医院で初めて発見されることがほとんどです。

上顎口蓋粘膜に出来た白板症

上顎口蓋粘膜に出来た白板症


この写真は上顎口蓋粘膜にできた白斑症です。不整形で白さが際立っています。

このように白く見えるのは角化層が厚くなったからで、擦っても撮ることはできません。

扁平苔癬(へんぺいたいせん)

扁平苔癬
扁平苔癬

癌に移行する確率約1%~2%

扁平苔癬は口腔潜在的悪性疾患の前癌病変に分類されている疾患です。

舌やほっぺたの柔らかい粘膜にできやすく、中高年の女性に多いのが特徴です。

扁平苔癬の明らかな原因は不明ですが、 細菌やウイルスの感染、 肝炎、 薬物や金属アレルギー、 自己免疫疾患などが関与していると言われています。

治療法は原因と考えられるものを一つ一つ探して治療します。扁平苔癬の粘膜に対してはステロイド剤の塗布などがあります。しかし、原因がなかなか特定されないため難治性疾患と言えます。

扁平苔癬の1%から2%が癌化すると言われていますが、 癌化する可能性が低いとはいえ、2ヶ月から3ヶ月間隔の歯科医院における定期観察が必要です。

扁平苔癬の見た目

舌の裏側に出来た扁平苔癬

舌の裏側に出来た扁平苔癬


レース状の白い病変が舌の裏側粘膜にできています。これは扁平苔癬です。

舌の側面に出来た扁平苔癬

舌の側面に出来た扁平苔癬


舌の奥の側面にできた扁平苔癬ですが、 痛みがないため本人が気づくことはまずなく、歯医者で発見されることがほとんどです。

ふかさわ歯科クリニック篠崎では、口腔がん検診だけではなく、口腔粘膜の異常にも対応しています。お口にトラブルが発生しても早急な診査・診断により悪化を防ぐことが可能となります。 もし、悪性の可能性がある場合には、生検で確定診断が必要なので大学病院をご紹介いたします。

江戸川区篠崎にて、口腔粘膜疾患の検査をご希望の方は当院までお気軽にご相談下さい。

【動画】舌癌や歯肉癌の初期症状を口内炎などと比較

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FULASAWA

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メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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