キシリトールの虫歯予防効果

砂糖とキシリトールの虫歯発生数の違い
糖アルコールの一種であるキシリトールは虫歯を予防する甘味料として知られています。キシリトールを食生活の中に取り入れることは非常に重要です。

下記のグラフは砂糖の主成分であるショ糖(スクロースとも言う)だけを食べたグループとショ糖の代わりに(つまり砂糖は一切食べず)キシリトールに置き換えたグループの虫歯発生歯面数を比較したものです。

約2年間の間で砂糖の摂取を続けたグループは、約12本の虫歯が出来たのに対し、キシリトールのグループは虫歯発生にはほとんど影響がありませんでした。
K.K.マキネンほか「キシリトールのすべて」より引用。一部改変

キシリトールでミュータンス菌のみが減少

キシリトールでミュータンス菌のみが減少

キシリトールによる無益回路

キシリトールを長期間(最低でも3ヶ月)摂取するとプラーク中のミュータンス菌(虫歯菌)が減少していきます。この作用は「キシリトール無益回路」で説明されています。

この無益回路は生理学的に難しいので、分りやすく説明すると、キシリトールはミュータンス菌によって代謝されないため、ミュータンス菌は“酸”を作れません。

まだ、難しいので更に分りやすく言うと、ミュータンス菌がキシリトールを餌として食べても、そこからは全くエネルギーが得られないばかりか消化するエネルギーを浪費しているしまうため、ミュータンス菌は増殖したり成長したりすることが出来ないということです。

善玉菌が増える

キシリトールを摂取するとミュータンス菌のみが減少し、他の口腔常在菌には影響しないので結果的に善玉菌が増えてきます。

口腔内は善玉菌優位の状態になり、母親から赤ちゃんへミュータンス菌が移りづらい状態になり、母親自身も虫歯になりにくい口腔内環境に変化します。

キシリトール摂取で虫歯菌の母子感染率が低下

Yukie Nakai ,et al.J Dent Res 2010年

妊娠3ヶ月目から出産9ヶ月目までの計13ヶ月に渡ってキシリトールを食べた母親と食べなかった母親で、虫歯菌(ミュータンス)が検出された子供の割合を比較したデータです。

研究費の関係で介入期間が13ヶ月間となったようです。

キシリトール摂取のタイミングはいつから?

虫歯菌(ミュータンス菌)の十分な感染防止を期待したければ、出産の1年以上前から継続的にキシリトールの摂取が必要と考えられています。従って、子供を作ろうと考えた夫婦はその時点から家族全員でキシリトールの摂取を開始するのが望ましいと思います。

キシリトールの摂取はいつまで?

生後31ヶ月(約2歳半)

グラフのデータはからも分るように生後9ヶ月でキシリトールの摂取を止めたため、その後の虫歯菌の感染率が高まっているのが分ります。

つまり、キシリトールの摂取を止めるとその効果は数ヶ月で減少してくるものと考えられます。従って、母親のキシリトールの摂取は「感染の窓」と呼ばれている生後31ヶ月(約2歳半)まで続けるのが理想的です。

もちろん、母子感染にかかわらず、自分自身の虫歯予防の為にも継続的にキシリトールを使うことは好ましいことです。

感染の窓

「感染の窓」と呼ばれる生後約19ヶ月~31ヶ月の期間に母親から赤ちゃんにミュータンス菌がうつると、その後の虫歯発生比率が高まります。

砂糖をすべてキシリトールにしないとダメ?

砂糖をすべてキシリトールに置き換える必要性?

砂糖をすべてキシリトールに置き換える必要はありません。

しかし、歯ブラシを余りしない人は歯垢が古くなり、ミュータンス菌を多く含んだバイオフィルムが形成されます。そうなると、虫歯の進行は加速度的に進んでしまいます。

つまり、虫歯予防には砂糖の摂取制限が必須となります。

依存性の高い砂糖

いくらキシリトールガムを噛んでも、日常生活で頻繁にしかも大量に砂糖や砂糖の入った食品を摂取しているような食生活では虫歯を発生させてしまいます。キシリトールの本場フィンランドでも、虫歯予防の基本はフッ素の応用とバイオフィルム除去、プラークコントロールです。キシリトールは「名わき役」なのです。

砂糖は麻薬と同じように依存性が強く健康にとってマイナスに作用する食べ物です。

砂糖は炭水化物の中でもGI値が最も高く、血糖値の急激な上昇を起こす糖尿病や肥満になり易いといった負の側面を持ちます。

そして、急激な血糖上昇は血管内皮細胞を傷つけて(グルコーススパイク)動脈硬化の引き金になります。動脈硬化が重症化すると脳梗塞、心筋梗塞など生命に関わる疾患を起こしかねません。

できることなら砂糖は一切口にしない生活が望ましいのですが、砂糖をオリゴ糖や希少糖などに置き換えるのも一方です。

ミュータンス菌が作る不溶性グルカン

ミュータンス菌が作る不溶性グルカン

不溶性グルカンとは

ミュータンス菌は砂糖(ショ糖)を餌とした場合、ジーターゼと呼ばれる酵素を出し、ネバネバした不溶性グルカン、プラーク(歯垢)の柱になるものを作ります。

不溶性グルカンを菌体にまとったミュータンス菌は容易に歯面に付着し、簡単には唾液や水で洗い流すことは出来ません。

プラーク内部で作られた酸が外へ出るのを妨げ、その部位での酸性度が高まります。

pHが5.4以下になると歯のエナメル質の脱灰(歯のミネラルが溶け出す)が始まり初期虫歯が出来ます。

キシリトールを食べるとミュータンス菌は不溶性グルカンを作れない

キシリトールを餌にしたニュータンス菌は、不溶性グルカンを作れないので、エナメル質表面に付着することが出来ずに容易に剥がれやすい状態になります。

また、ミュータンス菌の数自体が減少するため虫歯を作らない善玉菌が増えてきます。

キシリトール入り歯磨き粉は有効?

キシリトール入り歯磨き粉は有効?

キシリトールガムに比べると劣る

歯磨き粉のパッケージの成分表示にキシリトールと書かれた商品を選択して購入しましょう。

キシリトールガムほどの虫歯予防効果は期待出来ませんが、毎日行う歯磨きの中にキシリトールを取り入れることは有効です。

また、大人であればフッ素濃度1450ppmの歯磨き粉を選択して下さい。

キシリトールの特徴

天然素材甘味料

キシリトールは、トウモロコシや白樺などの樹木から抽出された成分を原料とする天然素材甘味料です。

キシリトールをガムとして噛むことにより唾液の分泌が促され、唾液の清浄作用・緩衝能(お口の 中の酸性度を中和する力)が高まります。

唾液が多いほど唾液に含まれるリンやカルシウムも多くなり、それらがエナメル質の表面に戻る「再石灰化」の働きも強まります。 その結果、歯が強くなります。

糖尿病患者への使用

キシリトールを摂取してもインシュリンの誘発性は無く、血糖値に影響はありません。従って糖尿病の患者さんにも安心して使用出来ます。

ふかさわ歯科クリニック篠崎では、このように虫歯や歯周病を未然に防ぐ予防歯科に力を入れ、患者様ご自身の歯が一生持つように予防主体の歯科健診や定期的な歯のクリーニングを推奨しております。予防歯科は歯の寿命だけでなく病気の予防とも関係しています。江戸川区篠崎にて、キシリトールの虫歯予防効果を知りたい方は当院までお気軽にご相談下さい。

【動画】初期虫歯COを削らずに自分で治す方法

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FULASAWA

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メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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